My Way

June 5, 2016

6月5日梅雨だそうだ。

 

「内倉!売れっ子になったらこの店、満員にしてくれよ!!」

 

元気のいい声で、タンクトップに墨入り、ジーパン腰履き、

ポケットからlouisvuittonのボロボロになった長財布が出ている。

いつもその格好。その人は僕を応援してくれていた、

東横線付近にあったカラオケ店に勤めて10年の「くりさん」

 

8年前、僕は六本木スタジオ勤務後、東京で独立真っ最中。

様々な企業、雑誌社、役100社以上にBOOK(作品)を持ってプレゼンに行っていた。わずかな収入だけでは厳しく、写真だけでは食えないので、いや、食えないが重要ではなく作品を撮るフィルム代等を稼ぐため、夜中のバイトが必要だった。

 

そのカラオケ店は、僕のアパートの近所のお店で、

私を含め5名で営業しフル出勤は4名。

僕は当時26歳でみんなに可愛がられていた。

 

 

70歳の店内ナンバーワンの

意地の悪いお婆さん店長。

 

20歳の女性に騙されていると分かっていながら、

貢いでいた55歳の男性。

 

将来ロックバンドメジャーデビューを

夢見る40歳のクールな男。

 

 

そしてボロボロになったlouisvuitton長財布くりさん。

 

バイト先で凄まじい派閥があり、このデンモクの片付け方、このドリンクの入れ方、乾き物の出し方、全員が僕に教える仕方が違うのだ。でも給料日の日はなぜか全員仲が良く、

必ず焼肉屋に誘われていた。近所の焼き肉食い放題で

「内倉、お前大変だろ食え!飲め!」

でも僕は、ビールが別料金なので気を使って注文しなかった。

 

みんなが生き生きとしていた記憶がある。だが、ある日の事。

チンピラ映画のような全身白のスーツ、金色のロレックス、クロコダイルの靴、エルメスのベルト、身長180cmの中肉中背、腹がやたらと出ている男が、

店長室にさっと入っていった。

 

10分後、ナンバーワンの意地の悪いお婆さん店長は、

皆んなを集め「今日は店を閉めわよ、皆んなで沢山食べて歌いましょうよ」というのだ。全員???だったが、1曲美空ひばりの「My Way」を店長が歌い終わった後、

 

「みんなごめん、今日でこのお店は閉店するの」

かすれるような声で、一生懸命にとにかく声を出していた。

 

10年間継続していたカラオケ店は、

白スーツの中肉中背の親会社により10分で潰れた。

僕は会社が潰れていくのをこんなにも、

間近で見るのは初めてだった。

 

別にその中肉中背が悪いわけではない。

ただ、ただ、夜中に異常な男がわざわざ「遺書=私事」を打ち込んでいるだけである。

 

あれから8年皆さんがどうしているのか、分からない。

 

個展の時に時間があれば、あの匂い、

あの空間、景色を撮りに、行こうと思う。

 

 

 

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