鏡越しの美しさはモノクローム
9月10日になりかけの夜。

コンビニの店員は外国の方で「いらっしいませ、ありがとうございます」は言わない。
居酒屋の客引きも厳しくなり、歩きタバコも更に厳しさを増し、
いつの間にか黒人のキャチも更に増えた、様々な人種が住み暮らす。半年ぶりの新宿。
僕は個展搬入時間を目前に、相変わらずMy Wayを聞いていた。
コニカミノルタギャラリーに入るとガラリと違う空間。
三人の作家とコニカミノルタの方々、フレーム&照明の方々。
その賑やかさは実に心地よく、今年いよいよ35歳になる中年おっさん化した僕には、
歌舞伎町で呑むよりも、新宿でショッピングするよりも、何よりも楽しく素晴らしい空間。
事前に展示レイアウトを決めていても現場に来たら展示レイアウトはもちろん変わる。
照明も変わるし、椅子を置くか置かないかだけでももちろん悩む。
音楽は消し、椅子も外す、蛍光灯は消し、スポットのみ。
生き生きと展示されガラスに入れられた作品には僕が映り込む。
それだけで十分だった。
僕はいつも個展の時に思うのだ。そしてギャラリストの方に言うのだ。
「この場所は我が城ですよ。ここに布団を引いて泊まりたいし誰も入れたくない」
作品に囲まれた空間は書斎、酒、高そーな服に食事、高級車、そんなもの話にならない。
作者にしか分からない究極のマイナスイオン?いやそれに例えておこう。
作品が僕を離れていき最も輝く。
そうなると作者の僕はもうギャラリーにいなくてもいいような気すらする。
コニカミノルタの担当の方の暖かさ、全てが美しく、
次の作品のインスピレーションの場でもある。
搬入が終わった夜の新宿は騒がしさなど、どうでもよく、
僕は嬉しくて、鏡越しの美しさはモノクローム。
24時間写真家でいるための環境作りの環境造り。
少し震えた手先と、早朝のブルーな色彩の新宿は
カラスすら白鳥になりそうに思えた。