Dear RUN Letter
気持ちのいい晴れた朝。いつものようにスタジオに行くと駐車場で、ご近所のおばあちゃんがパジャマ姿で立ちすくんでいた。僕は少しびっくりして「おばあちゃん、どうしました?」と聞くと「あのね、ランが昨日死んだの」ランは作品「犬の戦士団」で真っ白な犬で片足のない犬だ。展示や、WEB等で見ている人は気づくと思う。

「あのね、ごめんね、あの時に撮ってくれた写真を飾りたいのよ」 僕は少し時間を頂戴ね。と、言って30分後にはできるからね、と伝えた。 するとおばあちゃんは「この子と散歩に行ってくるわ」と言った。その写真は手のひらサイズの可愛いランの写真だった。 さて、どうしようか。。。巨大プリントしたランを倉庫から取り出すか。。など思ったがそのプリントサイズは凄まじいデカさで、おばあちゃんのご自宅にはとてもじゃないけど飾れない。では今からプリントをして額に入れて渡そう。そう決めて、毎日の掃除は急遽やらずにプリントに取り掛かった。「おはようございます」と、スタッフの杉野が出勤してきたので僕は事情を話しすぐ額を準備させた。 30分後、おばあちゃんはスタジオに戻ってきた。僕に沢山のランとの思い出のアルバムを見せてくれた。僕はそうか、こんな時もあったんだ、など、、ほんわかと見ていた。額に入れた作品のランを見せると、おばあちゃんはランがこんなにかっこいいわ!と喜んでくれた。僕は他にもランが昨年個展で展示されていた様子を見せたりした。
おばあちゃんは泣き出し「この子が東京、関西でこんなにカッコよく展示されたのね」と言っていた。僕は何も言えることはなかった、だけど一言だけ伝えた。 「ランはこれからも作品としてどんどん展示されるし、たくさんの人が見てくれますよ」と。 おばあちゃんは「生きる勇気が湧いてきたわ、ありがとう。でもね、"めざましテレビの今日のわんこ"に出したかったの。」それは何とも僕は何も言えなかったが、
あ、作品の先にはこんなにも大切な事があるのか。と改めて知った。
僕の作品&写真集「犬の戦士団」の犬達は間違えなく10年以内にはこの世にはいない。 そう考えると、迷いなんてない。ただひたすらに撮ってしまえ。これだけだ。
スマホ画像「おばあちゃんの手と想い出のアルバム」