ガラスの靴
「昨日さ、君と一緒にフレンチを食べる夢を見たのさ」「私は貴方と空を飛ぶ夢を見たの」「昨日さ、ooがさ〜、oooしてる夢みてさ困ったよいや本当に」「サンタさんが夢に出てきたの」「お化けが出てきた怖かったシクシク」「エスカレーターから落ちる夢みてさ。。。」「100億円拾った夢みたぜ!」寝てる時に都合よく出てくる夢。

僕は生まれて35年間、不思議なほどに夢を見ない。昔から睡眠中に、苦しんでる声を勝手に出すみたいだが夢を見た記憶はない。見た夢ときたらはっきりと覚えている夢が二つある。小学校時代の床がきしむ家に住んでいた僕。四谷怪談のお岩さんが出てきて、コタツで寝ている僕に、「一枚二枚三枚足りない。。」と、僕を見つめながら言っていた夢だ。その時、叫んだ僕に今はいないお婆ちゃんが「しんちゃん、大丈夫け」と、さすってくれた事と、2年前に巨大なカエルが目の前でゲロゲロと、どでかい声で鳴いていた夢。この二つの夢だ。よく考えたらろくな夢ではないし、めったに見ない夢がこの二つなんてあまりにも切ないものだ。 とろこで夢といえば僕はやはりアリスになるんだけど、彼女の場合現実逃避が強すぎた結果、夢が現実と変わらない世界になっている。それはそれでアリスはそんなに嬉しくはなかったのではないだろうか。このような事をキーボードに打ち込み出すと、シンデレラは架空の人物だがシンデレラこそ夢の中で生きていたのではないだろうか。それはそれで別に構わないけど、ガラスの靴を履くだなんてあまりにもロマンチックすぎて、いい夢見たなシンデレラ、美しいよ。など、全くどうでもいいことを少し夕方思った。 あ、四谷怪談の夢を見て、お婆ちゃんが「しんちゃん大丈夫け?」といった家だけど、様々な事情でもう直ぐとり壊す予定になっている。その家に僕は4ヶ月前に行った。行きたくなかったが、行かなければいけない事情があり、23年ぶりにその家に入って淡々と作業をした。カランとしたその家には昔の僕の落書きがあり、冷蔵庫、キッチン、婆ちゃんが寝ていた場所、姉が「入ってこないで!」と言っていた姉の部屋、そしてバスケに燃えていた時代の僕の部屋。その痕跡がほんの少しだけ残っていて、その壁を少し触り、思い切ってそこにあるものを全て捨てる作業をした。気が付いたらマスクをしていた僕は号泣しながら片付けをしていた。 4ヶ月前の年末の慌ただしい時期の出来事だ。 僕は全ての過去を美しくし、全部受け止めていく。
・作品「犬の戦士団」より一枚抜粋「その日を浴びた」
写真家 内倉 真一郎
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