f22・1/120・真夏の日中シンクロ

いつもよりインクをよく使う、プリントが出てくるのも少し時間が掛かる、すべて鮮明にプリントに写し出されるハーネミューレ。印画紙で作品をプリントしていた時代は、オリエンタルのバライタ紙を現像液に入れて、わざと少しだけ光をかぶせて独特な黄ばみを出すのが好きだった。久しぶりにハーネミューレを使うと余りに美しく鮮明に出てくるものだから、少し驚いている。だが、僕の作品は基本的にモノクロームの白から黒の美しい階調はほとんど無視をしている。一般的に言われるファインプリントではなく、僕の作品にベストな状態のファインプリントだ。なのでプリントの質も僕なりにベストな状態で出来た。

プリントをしていた作品は新作を含めた「肖像」「人間図鑑」は2010年、2011年、2014年、そして今を含め構成された作品になる。この作品には僕の大きな分岐点の時だった。大阪の学校で写真を学び、東京でコマーシャルスタジオで勤務しその後、独立。写真館を継ぐ気はまるでなかった。そして商業ベースの撮影をしながら作品(作家活動)をしていた。相変わらず、ストリートスナップばかりで主に、新宿へカメラを投げつけるような気分で街でスナップをし、体当たりをしていた日々。それは、NikonFM2。f22、1/120の真夏の日中シンクロ。ある日、どうしても宮崎に戻る必要があり僕は最後のストリートを撮影した。そして新宿Nikonサロンで個展を開催しストリートにさようならをした。

2008年、宮崎に戻り写真館で働きだした。頭の中は混乱もしていたが、僕が宮崎に戻った当初は、まるで抜け殻のような悩み抜いた1年間があった。僕はもう作品を撮らないのだろうかと。1年間暇さえあれば作品を撮り続けていたが、どれも心にグッとくる事がなくただ時間が過ぎていった。ある日、真っ白な壁に立ちすくんでいる少年を見かけた。その少年には突き刺さるような光が当たっていて、帽子の隙間から見えた瞳がギラリと光っていて、よく見ると汗も夏のコントラストで激しく光っていた。それを見た瞬間、僕は何の迷いもなく作品を撮り始めた。そう。背景に都市がないだけではないか、そこに気がついた。そして被写体を徹底して絞り選び抜いた。それが黒い布だけで全て自然光「肖像」。白い布だけの自然光の「人間図鑑」と続き、「佳子」「分離と融合」「犬の戦士団」「BABY」と繋がっている。 それぞれの作品は、全てにおいて写真であるという漠然とした一貫性と、断固とした決断と狂気。生と死の間にある美しい今がある。BLOOM GALLERYで開催する"PORTRAIT"は、僕の丸裸を曝け出すような展示になると思っている。 ・作品「震える瞳」より Photo by Shinichiro Uchikura

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