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愛おしく

身元不明だ。メーカーは書いてある。だが、誰が作ったのか、最初の購入者は誰なのか、誰に渡り父の手元に行ったのか。このカメラでどんな写真を撮っていたのか。今、この使えないカメラを僕は立派に飾っている。修理を出すつもりもない。このままでいい。

他には4×5/ハッセル/RZ67/ペンタ67/ニコンFM2を飾っている。どれも僕が宮崎に戻る前のカメラだ。そのカメラを僕は今、書斎でぼーっと眺めている。もちろん修理はしない。手入れも本当にごくたまに。このカメラ達は確かに作品を撮る手法にすぎないのだけど、最近はカメラが愛おしく思えてきた。 どれだけの日々を過ごしてくれたのだろうか。このカメラはあの作品を撮っていた時期、あの時代やあの匂い。それらと共に僕も撮り続けるのだろう、そして発表していくのだろう。それはなんて美しいことか。その美しさに劣らないよう、ボロボロになってもブルトーザーのように