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私の肖像

私は写真館で働いている。記念写真を撮り、その後、お客様にお願いをして作品を撮る。

あるいは、こちらから声をかけて撮影を行ったり、静かな場所でじっと人が来るのを待ち撮影する。

太陽光の下で黒いステージに立つあなた。

指示もしていないのにカメラ目線になったり、私に笑顔を見せたり、マスクを外したりする。

私は、約5分から10分の間に、500カットから1000カットの連写撮影を行う。

すると思いもよらない、無意識の中にある表情が写真に現れてくる。

それは、肉眼では確認できないさらけ出された表情、あるいは体の原始的な微妙な仕草。


 

私は撮り、選び、プリントする時に思うことがある。

大量のカット数の中から「あなた」をセレクトしていく過程では、

撮れた確信なるものが、その後のセレクトで消えることもあり、

撮れなかったかもしれない状態で、新たな「あなた」に出会うこともある。

もしかしたら誰しも、今の自分は絶対の存在ではなく、

無数の自分というものを秘めているのではないだろうか。


 

私は自己をレイヤーのように「あなた」に重ねる。

拡散され融合されたモノクロームから浮かび上がる「あなたと私」。

それは、一枚の写真となり、二度と出会うことのない未知の存在のようだ。

「私の肖像」は連写から生まれた彫刻のように、

蓄積された「あなたと私」との愛の関わりである。

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